市岐阜商の荒川颯太君
(26日、高校野球岐阜大会 大垣日大1―0市岐阜商)
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岐阜大会準決勝、三回に1点を先制された直後の市岐阜商の攻撃。荒川颯太君(3年)が打席に立つ。初球を振り抜くと、打球は二塁手を強襲し、内野安打に。50メートル6・1秒の俊足を誇り、ヒット1本でも本塁に戻れる自信があったが、併殺で断ち切られた。
生まれつき色の見分けが苦手だった。守備位置の中堅からは、打球が地面の色や空の色に隠れたりして見えなくなることがあった。「悔しい思いをしたこともあると思う」と母の美咲さん(42)は言う。
弱点をカバーするため、打者のバットの構え方を見て打球の方向を考える工夫をした。「右打者だったら外角の球はライトに流してくる」。走り出す方向を瞬時に決め、スタートを切ることで守備範囲が広がった。攻撃では足の速さを発揮し、出塁すれば牽制(けんせい)をためらうことなく盗塁を狙った。気づけば守備力も打撃力も向上していた。
つかみとったレギュラー。9番打者ながら俊足は対戦校から警戒された。4回戦の岐阜各務野戦では死球で出塁すると、次打者のゴロと盗塁で三塁に進み、犠飛で生還した。秋田和哉監督が「何かしてくれると期待できる選手」とたたえる意外性でチームに貢献してきた。
最後の打席では、「意表を突いてやろう」とセーフティーバントを試みた。昨夏はスタンドから見ていた準決勝での大垣日大戦。試合後、スタンドにあいさつすると泣き崩れたが、「最高の夏だった」。全力で挑んだからそう言えた。=長良川(松浦祥子)