大阪市立大は27日、胃がんで最も多い腹膜への転移による再発を、胃がんの切除手術中に予測できる新たな診断法を開発した、と発表した。従来法と組み合わせれば感度を大幅に上げられ、再発予防の対策に生かせるという。
国内では胃がんで毎年約5万人が死亡し、半数は胃や腸を包む腹膜への転移が原因。腹膜転移は胃の内側の粘膜でできたがんが胃の壁に入り込み、一番外側の漿膜(しょうまく)を破って起きる。いったんがんを切除しても再発すると完治は難しく、平均余命は1年ほどとされる。
現在は、胃がん手術中におなかの中を洗った食塩水にがん細胞が含まれているかどうかで腹膜転移の可能性を診断しているが、実際に再発した4~6割は陰性と判定されており、精度の低さが課題だった。
八代正和准教授(腫瘍〈しゅよう〉外科)らは、手術中に胃の漿膜にガラス板を押しつけて、がん細胞がついていないか確認する診断法を考案。漿膜からまき散る直前のがんもとらえられ、30分ほどで診断できる。従来法と同時に用いると、感度が2倍近く上がった。
この結果を受け、八代さんらは4月、腹膜転移を抑える臨床試験を始めた。新旧の診断を手術中に実施し、どちらかが陽性だったら、手術の終わりに食塩水で腹膜を12回洗う。マウスの実験では、腹膜に付いたがん細胞を洗浄で減らせることが確認でき、再発までの期間を延ばせる効果が期待できるという。
八代さんは「今回の手法がうまくいけば、腹膜への転移が多い膵(すい)がんや卵巣がんにも適応できる可能性がある」と話す。成果は国際学術誌サージカル・オンコロジーに掲載された。(阿部彰芳)