大冠―大阪桐蔭 九回表大冠1死一、二塁、冨山は左中間に適時二塁打を放ち、塁上でガッツポーズ=シティ信金スタ(舞洲)、小林一茂撮影
(30日、高校野球大阪大会 大阪桐蔭10―8大冠)
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大阪府立校の大冠(おおかんむり)が決勝で、選抜王者に打力で立ち向かった。
4点を追う九回2死二、三塁、相手は大阪桐蔭のエース徳山。追い込まれた大冠の主将猪原は、力と力の勝負を挑んだ。「日本一の投手。ストレートを待って、変化球は反応で」。こうやって待って、打ったのはスライダー。打球は左翼線へ。2点二塁打になり、2点差に。あと一歩まで、王者を追い詰めた。
「強豪の私立に勝つためには打つ力が必要」と東山監督。数年前から打撃に力を入れてきた。グラウンドはサッカー部などとの共用で、フリー打撃は制限される。そこで、素振りに特化して練習をしてきた。
1日1千スイングを課し、選手には毎日、スイング数と体重をグラウンドの倉庫の壁に貼ってある表に、書き込ませてきた。バットも2メートル弱の長尺バットや1・8キロの鉄製バットを使い、振り込んだ。体幹トレーニングの休憩中にも、素振り。守備練習の合間にも素振り。1時間の朝練も打撃練習に費やした。
猪原は振り返る。「むちゃくちゃきつい。1年のころは毎日、手が血だらけでした」。この冬、選手たちは重さ1キロ以上のバットで1日3千スイングをノルマにし、振り込んできた。
四回には5長短打で4点を奪い、3点リードを奪った。6点差で迎えた九回には、5長短打を集めて2点差に詰め寄った。試合には負けたが、観客をわかせたのは、大冠の打線だった。
「2安打と2点、足らなかった。でも、最後までやってきたことをやってくれた。満足している」。試合後、東山監督はそう言って、と目頭をぬぐった。
4安打を記録した猪原は、すがすがしい表情で振り返った。「公立校でも、ここまでやれることを見せたかった。甲子園に行けなかったのは悔しい。でも、やってきたことは報われました」=シティ信金スタ(小俣勇貴)