聖光学院―おかやま山陽 二回表聖光学院無死一塁、仁平は左越えに先制の適時三塁打を放つ=細川卓撮影
(10日、高校野球 聖光学院6―0おかやま山陽)
■聖光学院・仁平勇汰
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18年前の7月。母も子も危ない状態と言われながら生まれ、管をつながれて病院にいた。「逆境にもくじけず、勇ましく育ってほしい」。そんな両親の願いが込められた「勇汰」が晴れ舞台で躍動した。
二回に先制適時三塁打、三回に二塁打、五回に右前安打。史上6人目のサイクル安打達成はならなかったが、3安打2打点。「まさか、甲子園で活躍できるなんて……」
小学生の時、父・順一さん(40)が監督を務める少年団でソフトボールを始めた。雨の日も、風の日も父と一緒にバットを振った。中学は軟式。「強い学校でやりたい」と聖光学院を目指したが、周囲は「考え直せ。試合に出られないぞ」。ただ、両親だけは違った。「決めた道を進みなさい」と母・孝子さん(46)。願書の出し方などを家族で調べ、強豪校への道を自ら切り開いた。
甲子園常連の聖光学院では試練ばかりだった。何もかもがうまくいかず、2年秋に3年間で唯一、家族の前で弱音を吐いたという。その時も孝子さんに言われた。「最初からチャレンジャーとして入ったんだから、うまくいかなくて当然。家族も同じ気持ちで応援しているから」
あきらめず、前を向き続けた。「支えてくれる人がいる。絶対に貫き通す」。普段の金属バットより重い1キロの鉄バットを振った。仲間には「どんなにつらくてもマイナスの言葉は言うな」と訴え続けた。そんな姿勢が認められ、6月には新チーム発足後から交代が続いていた主将に任命された。斎藤監督は「チーム全体を見渡せて、包容力がある。彼自身がコツコツ積み上げてきた子ですから」と信頼を寄せる。
この日の朝、福島県から12時間かけて甲子園に駆けつけた母に「遠くから来てくれてありがとう。全力で頑張る」とメールを送った。そして、大車輪の活躍で、2年連続初戦突破に貢献した。「聖光が超えたことがないベスト8を超えたい」。勇ましい主将は誓った。(大西史恭)