広陵―中京大中京 九回裏中京大中京2死満塁、伊藤康は右前適時打を放つ=阪神甲子園球場、林敏行撮影
(11日、高校野球 広陵10―6中京大中京)
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「最弱」と呼ばれ、悔しい思いをしてきた中京大中京(愛知)の選手が、最終回に打者9人の「全員野球」で猛攻を見せた。伊藤康祐主将(3年)はこの日の広陵(広島)戦、先取点となる本塁打を放つなど3安打の活躍。6―10で敗れはしたが、憧れの大舞台で成長を見せたチームを最後まで引っ張り続けた。
7点リードされた九回裏、2安打などで2点を返し、なおも2死満塁。逆転を期待する観客の大きな手拍子が球場全体を包むなか、伊藤主将が打席に入った。3球目の外角球を右前にはじき返し、さらに1点を追加する適時打を放った。「全員が泥臭くつなぐ、自分たちの野球を見せられた」。伊藤主将は、一塁上でガッツポーズを見せた。
新チーム結成以来、「中京史上最弱」と呼ばれてきた選手たちは自らを「どろだんご集団」と名づけた。「一人ひとりは泥でも、それぞれが集まって固まれば泥だんごのように強い集団になれる」(伊藤主将)。そんな思いを込めた名称を合言葉に、チームは徐々にまとまり、一度のリードも許さず愛知大会を制した。
この日は、序盤にリードを奪ったが、中盤以降は失点を重ねる苦しい展開で、終盤には大差をつけられた。それでも「最後まであきらめずに戦おう」と仲間を鼓舞し、「最終回は、全員が後ろにつなぐという意識で一つになった」。
3番から始まった九回、各打者が粘りを見せ、3安打3四死球で3点を奪った。泥だんごが強く固まり、強い集団になった瞬間だった。その姿に、約4万7千人の観客からは大きな声援が送られた。「高校野球をやってきて、一番気持ちの良い時間だった」
試合後、伊藤主将の目に涙はなかった。「チームが一体になり、泥臭く戦う自分たちの良さを最後に出せた。『最弱』と呼ばれたこともあったが、主将をやって本当に良かった」(井上昇)