17日の智弁和歌山―大阪桐蔭 三回表智弁和歌山2死二塁、左前安打で走者津田が本塁を突くが山本の好返球でタッチアウト。捕手福井。投手徳山①。次打者森本④=北村玲奈撮影
(17日、高校野球 大阪桐蔭2―1智弁和歌山)
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智弁和歌山のプライドを取り戻す戦いだった。
1―2の敗戦。意地を見せられたのでは、という問いに高嶋監督は首を振った。「ええゲームはできた。でも、勝たなかったらええゲームじゃないですよ。勝たなかったら、意地じゃない」
選抜王者の大阪桐蔭には、春の近畿大会で3―6で負けている。「力は向こうが上」と認めつつ、選手たちは決して逃げなかった。
エース黒原は一回、3番中川を内角直球で見逃し三振。三回には1番藤原も内角直球で空振り三振に仕留めた。
大阪桐蔭打線は、智弁バッテリーが直球と低めのチェンジアップのコンビネーションで攻めてくると予想していた。が、ふたを開けると、緩いカーブやスライダーを効果的に交える投球。そして勝負どころで内角直球が決まった。「会心のリード」と捕手の蔵野を褒めたのは、この春就任した中谷コーチだ。
打線も大阪桐蔭のバッテリーから12安打を放った。中盤は間違いなく、智弁和歌山のペースだった。
しかし、さすがは選抜王者。大阪桐蔭のバッテリーも、守備陣も崩れない。エース徳山は「夏は打たれるもの」と思っている。だから、ピンチでも焦らない。
桐蔭が守りですごみを見せたのは、三回だ。2死二塁で左前安打。左翼手山本の手前で、打球がイレギュラーしたが平然と処理。本塁を狙った二塁走者を、ワンバウンドのストライク送球でアウトにした。
山本によると、甲子園の芝は短く刈り込んであり、たまにイレギュラーすることがあるという。「選抜は長めだったんですけど、この夏は短い。甲子園練習でも、1回戦でも、この日の試合前も芝生の状態は確かめていますから」
1997、2000年に全国を制した智弁と、08年以降、3度優勝している大阪桐蔭。
いわば、「新旧王者」の対決。どちらも「強打」のイメージが強いが、意外なことに、両監督ともに「守りのチーム」を自認する。
ただ、考え方は違う。「先に点を取って、あとは守って逃げ切る」と先攻を好む高嶋監督。対して西谷監督は「バッテリーを中心にまず守ってリズムを作る」と後攻を好む。智弁にリードを許さなかったという意味では、この試合は大阪桐蔭のペースだったのかもしれない。
智弁の12安打のうち、長打は1本だけだったことも大きい。「うちの今年の外野はいいんですよ」とは桐蔭の橋本コーチ。外野の間や右翼線、左翼線に飛んだ打球でも、藤原や根尾ら俊足強肩の外野手が、素早い打球の処理で「二つ目の進塁」を許さなかった。
「これだけ打てて点が取れんのはしょうがない」と高嶋監督。そして、こうも言った。「来年につなげてもらわな困る。甲子園にも来たし、自信になったと思う。強くなってもらわないと」。1回戦で甲子園で6年ぶりの校歌も歌った。完全復活へ。1年後の100回大会を見すえた。(山口史朗)