秀岳館の吉安雄飛君=北村玲奈撮影
(17日、高校野球 広陵6―1秀岳館)
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■秀岳館・吉安雄飛
趣味を聞かれたら、「LINE(ライン)」と答える。秀岳館で携帯電話を使えるのは、練習後の30分間か休日だけ。その時間が支えだった。
182センチ、99キロ。持ち味は長打だ。でも、この冬、大スランプに。紅白戦では必ず三振した。ひどいときには3三振。秋にもらった背番号3は、選抜大会前に失った。熊本に残った。後輩とひたすらボールを打ち込む日々。惨めで、野球をやめたくなった。選抜開幕前日の3月18日が一番つらい日になった。地元の大阪にいる母・八重子さんの44歳の誕生日だった。
お祝いよりも先に送ったメッセージがある。「メンバーに残れなかった。本当にごめんなさい」
中学までは母の小言も応援も煙たがり、口げんかが絶えなかった。親元を離れ、初めて気づいた。「全部、自分のためにやってくれたんや」。チームでは明るいキャラを演じたが「意外と弱い」と知っているのは母だけ。「打てへん。どうしたらいいか分からない」。画面には、弱音を打ち込めた。
日付が変わるころに自主練習が終わる日も多い。遅い時間でも母は必ず返してくれた。つらいときは誕生日の返信を見返す。「大丈夫。まだ終わりじゃないよ」。励みにして不振から抜け出した。「やるだけやったる」と送った。夏、背番号13を手にした。
甲子園では出番がなかった。母はアルプス席から見守ってくれた。「一度でいいから打席に立つ姿を見せたかった」。泣きやんだ後、伝えたい言葉が浮かんだ。直接言うのは照れくさいけど、LINEでなら本音を言える。「今まで支えてくれてありがとう」(小俣勇貴)