四回裏の投球を終え、笑顔でベンチに戻る青森山田の三上世視滝君(右)=18日、阪神甲子園球場、小林一茂撮影
(18日、高校野球 東海大菅生9-1青森山田)
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18日の第4試合に登板した青森山田のエース、三上世視滝(せしる)君(3年)は寮を抜け出したり、遅刻したりする「問題児」だった。一度は試合出場もあきらめたが、「支えてくれた人たちを裏切ってはいけない」と再び野球に向き合い、甲子園のマウンドに立った。
三上君は中学校でも投手だったが、最後の大会は三塁コーチ。でも、青森山田の三浦知克部長は注目していた。三上君が小5の時の試合で主審だった三浦さんは、3球連続で同じきわどいコースに投げる投球を見て、「審判の心理も分かっている、やっかいな投手」と感心していた。
青森山田に入ってから、三上君はすぐに試合に出始めた。ところが、2年の夏にけがをし、練習に参加できなくなる。試合に出られない悔しさを晴らそうと、夜に寮を抜け出して遊びに行ったことが発覚し、退寮させられた。
「期待していたが、野球以外がだめだとチームワークにも関わる」と兜森(かぶともり)崇朗(たかあき)監督は話す。以前から、遅刻や練習態度の悪さを叱って「出てけ」と言えば、そのまま出て行く三上君に手を焼いていた。
試合に出られないと覚悟した三上君が「俺、何しにここに来てるんだろ」と思った時、周りを見た。朝4時に起きて、自分を学校に送ってから仕事へ行く父。「小5のときから一緒に野球をしたいと思っていた」と言ってくれた三浦さん。見捨てずに、「一緒に甲子園へ行こう」と言う仲間。「もう裏切れない」と覚悟し、リハビリをしながら、自分が住んでいない寮の掃除に励むようになった。
昨冬から投手に復帰し、今夏の青森大会は背番号1。遅刻や手抜きをしなくなり、抑えをまかされた。
「野球で恩返しがしたい」と臨んだ甲子園は東海大菅生(西東京)の強力打線に打ち込まれ、6失点のほろ苦い経験だった。でも、「皆に助けてもらった。こんな投手と歩んでくれてありがとう」と話す三上君は晴れ晴れした表情だった。(板倉大地、大野択生)