（１８日、高校野球 明豊９―８神村学園）

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「まだ終わらない」。九州勢対決は終盤に両校の意地がぶつかり、これぞ高校野球という戦いになった。

３点を追う十二回裏の攻撃前。自分の悪送球で傷口を広げた明豊の２番手溝上は、絶望的な思いでいた。だが、仲間たちが口々に発した「取り返すぞ」という言葉に救われた。主将の三村は円陣の中で叫んだ。「ここしかないぞ！」。川崎監督は３点差を追いつかれた九回を思い起こし、「神村にできて、ウチにできないはずがない」と自分に言い聞かせていた。

だが、簡単に２死をとられた。２死目の遊飛に倒れた５番佐藤祐は、６番松谷に声をかけられた。「俺が打ってくるから」。ベンチに戻り、佐藤祐は「まつたにー」と叫んだ。

松谷の言葉は、強がりに終わらなかった。神村の３番手金城のスライダーを中前へ。球場中の雰囲気が変わる。「何かがあるぞ」というムードが３万人の観衆に広がった。続く吉村は「自分で終わるわけにはいかん」と外角のカーブをバットの先に当て、左前に落とした。

代打三好は四球で２死満塁。続く２年生の管（かん）は、先輩たちの「お前で決めてこい」との声に送り出された。２球目の暴投で１点を返す。カウント３―１になったが、管は「打つ。打ってチームの役に立つ」と決めていた。外角直球をたたき、左前安打。２点が入って追いついた。

マウンド上の金城は焦っていた。本来は内野手。九回に２番手中里に代打を送ったために、送り出せる投手がいなくなり、制球のよさを買われての登板だった。超スローボールも交え、３イニングをゼロでしのいでいた。「３点差があると思って楽にいったら、裏目だった。相手はそれまで振ってきたコースにも手を出さなくなってました」

もう押せ押せだ。内野安打と四球で再び塁が埋まった。そしてここまで甲子園で２本塁打を含む１０打数６安打と絶好調の浜田。３球続けてのボールで、甲子園は異様な雰囲気になる。「体力がなくて、真っすぐしかなかった」と金城。渾身（こんしん）の外角直球で２ストライクをとった。「もう１球」の思いで右腕を振る。同じ軌道で球は放たれたが、わずかに外れた。終わった。

神村の粘りもすばらしかった。九回に３点差を追いつき、十二回は２死満塁から絶妙のバント安打で、一時は３点を勝ち越した。あきらめない戦いを貫いた両校によって、高校野球史に刻まれる熱戦が生まれた。

明豊の川崎監督は言った。「甲子園へ来るまで、粘りだけが不安要素でした」。死闘の末、一気にその懸念が解消された。明豊が春の九州王者・神村学園を破り、チーム初の４強進出をかけた戦いへ進んだ。（篠原大輔）