終盤の追い上げに、涙を流して仁王立ちする木村
(22日、高校野球 広陵12―9天理)
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■天理・木村虎之亮
熱い太陽の下、紫の着物とはかま姿で微動だにせず、厳しい表情で仁王立ちを続けた。志願した天理伝統の応援団長を、甲子園でやりきった。相手を威嚇しているわけではない。どっしりと、みんなの守り神でいたい。そんな一心で、躍動するチームメートをじっと見ながら、スタンドでこの3年間を思い返した。
ケガで苦しみ続けた。まともにプレーできたのは数カ月あるかどうか。1年の秋にティー打撃の打球が当たり、唇の裏を7針縫い、前歯の神経がなくなった。年明けには両足太もも肉離れと腰椎(ようつい)分離症。復帰してすぐの2年秋に練習試合でチャンスをもらったけど、試合中に左太ももを肉離れした。仲間は「ついてないな」と同情してくれた。
背番号が欲しかった。最後の夏にかけて猛練習した。バットの振り過ぎで右手首の軟骨を痛めた。医師は「夏は間に合わんな」。ぼうぜんとした。
そんな時、励ましてくれたのが天理中軟式野球部から進んだ同期4人のうち、唯一ベンチ入りした橋本だ。更衣室や食堂でいつも隣にいて「俺、あの子狙ってんねん」「じゃあ、最初のデートどこ行くんや」。つらい時ほど、たわいのない話で癒やされた。
だから、6点を追う九回の先頭で代打に立った橋本が内野安打を放った時は、こらえきれずに泣いた。どんな時でも表情を崩さないのが応援団長の決まりなのに。でも、これでよかったのかな。みんな最後まで全力プレーで、すごい追い上げだったから。(有田憲一)