黒田福美さん
第2次世界大戦で犠牲となり、日韓のはざまで埋もれた人たちがいる。日本の軍人・軍属として亡くなった朝鮮半島出身者だ。「日本人」として死に、韓国では「反民族行為者」と見なされた。俳優の黒田福美さん(61)はそんな人々を弔う碑を韓国に建てたが一部から抗議を受け、横倒しになったまま。現地での追悼は今秋、10年目を迎える。
「帰郷祈願碑」と刻まれた碑は韓国・ソウル近郊、竜仁市の寺にある。
きっかけは25年ほど前、黒田さんが見た夢だった。青年が現れて言った。「僕は朝鮮人なのに、日本の名前で死んだことが残念だ」
黒田さんは東京の靖国神社や、国籍を問わず戦没者らの名を刻んだ沖縄の「平和の礎(いしじ)」などを訪ね、戦時中、鹿児島県の知覧にあった特攻基地から沖縄の空へ飛び立ち、亡くなった一人の朝鮮人青年、「卓庚鉉(タクキョンヒョン)さん」のことを知る。調べていくうちに引き寄せられていき、夢の青年と信じるようになった。
2000年2月、卓さんの親族に会いに韓国を訪ね、彼の碑を建てたいと申し出た。しかし、設置場所に選んだ故郷・泗川市の住民から「なぜ1人だけ弔うのか」と言われたという。
厚生労働省によると、日本の軍人・軍属のうち、朝鮮半島出身は約24万人、死者は約2万2千人とされる。経済的な理由から志願した人もおり、「日本にくみした」として非難された。韓国内では近年、徴兵・徴用された人への名誉回復の動きもあるが、そうした戦没者の存在を周囲に知られまいと、身内の中には口にするのも拒む人がいる。
黒田さんは泗川市で慎重に建立…