米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐり、米国を除く11カ国による首席交渉官会合が28~30日、豪シドニーで開かれる。日本は、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で大筋合意することをめざしつつ、米国の復帰も促すような修正案を各国と探る。
会合では、12カ国で合意した貿易投資のルールのうち、見直しを希望する項目を各国が示す。各国が米国に譲歩を迫られた項目について、それぞれ修正を求めるとみられる。
修正が有力なのが、実質8年となった医薬品のデータ保護期間だ。製薬会社の利益を守りたい米国が長期間の保護を主張したが、この期間中は安い後発薬を作れないため、途上国を中心に短縮を求める声が強い。
日本は、医薬品データ保護期間を短縮する場合、米国が戻れば元の条件に戻すことをあらかじめ決めることで、米国に「戻った方が得」と思わせる仕組みづくりをめざす。
国有企業改革など、ほかにも米国の意向で譲歩した内容の修正を求める国が出る可能性もある。
個別品目の関税率については修正しない方向だ。ただ、低関税の輸入枠などで各国の立場が割れる可能性があり、調整が難航すれば11月の大筋合意は遠のく。
日本政府は7月以降、体制を一新。首席交渉官には、外務省北米局長などを歴任した梅本和義氏を充てた。8月には、米国公使だった尾池厚之氏を首席交渉官代理に据えた。内閣官房のTPP等政府対策本部の人数も30人と、5月時点の約1・5倍に増員。米国復帰に向けた土台固めも進めながら、11カ国の本格的な協議に臨む。
茂木敏充担当相は25日、豪州のチオボー貿易相、ニュージーランドのマクレー貿易相と相次いで電話会談。両国と「11月のAPECでよい成果が出せるよう、豪州の会合で連携し、主導的に議論を進める」ことで一致した。(南日慶子)