自著が原作の映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」が公開中のジェームズ・ボーエンさん
■「猫の恩返し」で人生を救われた ジェームズ・ボーエンさん
傷ついた野良猫を助けたら、その猫に人生を救われた。
特集:ネコ好きのあなたへ
2007年春、ロンドン。路上でギターの演奏を終えてアパートに帰ると、脚をけがした猫がうずくまっていた。放っておけず、動物病院に連れて行き、1日分の稼ぎで薬を買った。「それから、僕らは離れられない関係になった」
猫をボブと名付けた。
それまでは絶望的な道を歩んできた。両親は離婚、自身は薬物に依存。路上で演奏して暮らす日々だった。ある日、出かけようとすると、ボブがついてきた。追い返してもぴたりと寄り添い、ついには肩に乗ってきた。そのまま演奏していると、人だかりができた。
英国王立動物虐待防止協会に通報されたこともあるが、「ボブは自分の意思でついてきていると協会も認めてくれた」。1人と1匹はSNSでも話題になり、出版社から執筆依頼がきた。
ボブとの関係をつづった本は続編を含めて1千万部が売れた。映画化もされ、「ボブという名の猫」は日本でも上映中だ。
印税のほとんどを、飼い主のいない犬猫保護の基金や薬物依存症関係の団体などに寄付。いまは動物愛護団体で働き、ホームレスの就労支援の活動に関わる。「ボブが僕を家族に選んでくれなかったら、こんな人生はなかった。ボブが僕を助けてくれたように、今度は僕が誰かの役に立ちたい」(太田匡彦)