火災から避難までの経緯
東京都渋谷区で10日夕、沿線の建物火災が小田急線の車両に延焼する火事があった。けが人はなかったが、乗客300人が線路に避難した。小田急などによると、緊急停止した8分の間に車両に火が燃え移ったという。
乗客300人、避難完了まで30分 小田急線沿線火災
警官が非常停止ボタン、たまたま火災現場脇 小田急延焼
小田急や警視庁などによると、同区代々木5丁目にあるボクシングジムが入るビルから出火したと119番通報があったのは、10日午後4時6分ごろ。
小田急によると、「消火活動をするため電車を止めてほしい」と消防から現場で依頼された警察官が、通報から5分後に近くの踏切にある非常停止ボタンを押した。列車に自動的にブレーキがかかる仕組みが作動し、新宿行き上り列車(8両編成)が「たまたま火災現場の目の前に止まった」(小田急)という。
ジムの入るビルからわずか3メートル。ここで一時とどまっている間に2両目の屋根に延焼した。
小田急では沿線で火災が起きた場合、「運転士や車掌が覚知したら電車を安全な場所で止める」のが原則だという。今回、運転士は白煙は確認したが、火災とは認識しておらず、踏切事故などで非常停止ボタンが押されたと考えた。安全確認のために電車を降りて初めて火災に気づいたという。
運転士は手動で非常停止状態を解除し、運転指令に連絡して電車を動かす許可を取った。停止から8分後、火災から遠ざけるために電車を動かし始めたが、直後、現場にいた消防から屋根への延焼を知らされ、約120メートル前進したところで再び停車。乗客を避難させたという。
乗客は、1両目と8両目のドアから、車外に出た。全車両のドアを開けなかった理由について、小田急は「対向する下り車線の運行が確実に停止されているか確認できていなかったことに加え、車内が燃えていたわけでもないので、乗務員の目が届く場所から降ろすことにした」という。
燃えたのは電気設備周辺を絶縁するため、ステンレス製の車両に上塗りしているウレタン樹脂。難燃剤を混ぜるなどして燃えにくくしているが、今回は炎の勢いが強かったと小田急はみている。(千葉雄高、阿部健祐)