トルコのトロイ遺跡で猫を抱いて写真に納まる小田実さん。これが最後の旅になった=2007年4月、玄順恵さん撮影
作家の小田実(まこと)さんが亡くなって今月末で10年になる。1960年代から反戦・反核運動をリードした作家が残した言葉がいま、問いかけていることを考えようと、ゆかりの人たちが23日、大阪で集いを開く。
大阪市出身の小田さんは65年、「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」を結成。デモの先頭に立つなどした。阪神・淡路大震災で兵庫県西宮市の自宅で被災した経験から被災者への公的支援を求め、被災者生活再建支援法の成立につなげた。2007年7月30日、75歳で死去した。
集いを企画したのは、大阪府八尾市の北川靖一郎さん(73)と美紀さん(70)夫妻。小田さんが89年、平和や環境問題について政策提言しようと立ち上げた「市民の意見30・関西」の事務局を務める。
靖一郎さんは、小田さんが繰り返していた「普通の国になろうとすることが一番危ない」との言葉をかみしめている。集団的自衛権の行使を容認した閣議決定や、安倍晋三首相による憲法9条の改正発言が、平和を破る方向に進んでいると感じるからという。「平和をつくり出すため、どう自分の足で歩き、頭で考えるか、話し合いたい」
集いには、小田さんが「人生の同行者」と呼んだ妻の玄順恵(ヒョンスンヒェ)さん(64)も参加する。亡くなる直前、民主主義の源流を探ろうと古代ギリシャの都市やトロイ遺跡を2人で訪ねた。「民主主義(デモクラシー)の語源となった、小さな人間(デモス)の力(クラトス)が社会を変えると小田は信じていた。そのことを再確認する場にしたい」
「小田実没後10年・関西の集い」は23日午後2時、大阪市中央区法円坂1丁目のアネックスパル法円坂である。小田さんが設立を提唱した「独日平和フォーラム」共同代表のオイゲン・アイヒホルンさんや、著作を翻訳した詩人の金鐘哲(キムジョンチョル)さんらが「小田実が遺(のこ)したもの、引き継ぐもの」をテーマに語る。問い合わせは北川さん(090・8149・7615)へ。(千種辰弥)