帰還困難区域を除いて避難指示が解除された福島県富岡町では今年4月、JR富岡駅前といわき駅前を結ぶ路線の運行が始まった=JR富岡駅前
福島県内でバス会社の運転手不足が深刻になっている。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による避難や高齢化などによる運転手の減少に加え、復興事業への人材流出が追い打ちをかける。被災地域では交通網の整備が帰還政策の重要な柱だけに、運転手の確保が喫緊の課題となっている。
「生活路線の確保には、運転手の数が最大の問題。運転希望者がいれば、情報提供をお願いしたい」
7月下旬、福島市内で開かれた公共交通整備を巡る会議の終盤で、新常磐交通の門馬誠・乗合(のりあい)部長が切り出した。
会議には、県や原発事故に伴う避難指示が出た12市町村の担当者のほか、バス会社の幹部らが出席した。
避難者の帰還を促したい自治体関係者からは「新しい路線を早く運行して欲しい」「停留所を多くできないか」など要望が相次いだが、門馬さんは「復興事業に運転手が流れ、本当に採用ができない」と運転者不足の深刻な現状を訴えた。
東北運輸局が実施した東北6県の路線バス会社25社へのアンケート結果によると、バスを運転できる大型二種免許の保有者は、2015年度末で県内約1万7千人。01年度末と比べ、10%減った。主因は原発事故に伴う避難や高齢化だが、県沿岸部では別の事情が減少に拍車を掛ける。
■空港バス運休も
いわき市に本社を置く新常磐交通によると、震災前、相双地区に約50人いた運転手は、避難や高齢化で数人に減少。平日通学時に運行する1日約850本を180人に満たない運転手で支える。
運転手を増やそうと大型二種免…