アインシュタインが約100年前に存在を予言した「重力波」の観測に成功したと28日、イタリアなどの国際共同研究チームが発表した。重力波は2年前に米国で初観測され、今回が4回目。欧州で観測されたのは初めて。
重力波は、非常に重い天体が高速で運動すると、より強く発生する。今回の観測は8月14日。2015年に初めて重力波をとらえた米国2カ所にある観測施設「LIGO(ライゴ)」に加え、欧州の観測施設「Virgo(ヴィルゴ)」でも同時に観測された。地球から18億光年離れた場所で太陽の31倍と25倍の重さの二つのブラックホールが、互いの周囲を回りながら合体して発生したとみられる。
Virgoは長さ3キロのパイプをL字型に直交させ、内部に通したレーザー光を使って重力波をとらえる巨大な装置。フランス、イタリアなど欧州の20カ国が参加してイタリアのピサ近郊に設置。観測開始からわずか2週間後に重力波をとらえた。
G7科学大臣会合が開かれているイタリア・トリノで会見した共同研究チームは「LIGOの2カ所と欧州の計3カ所で同時に観測できたことで、発生源を精度良く分析できた」と説明した。
日本でも東大宇宙線研究所などのグループが、岐阜県・神岡鉱山の観測施設「KAGRA(かぐら)」の運用を計画しており、2019年度に観測態勢が整う。重力波の発生方向を厳密に知るには地球上の少なくとも3地点、できれば4地点で同時に観測する必要があるとされる。プロジェクトリーダーの梶田隆章・同研究所長は「Virgoの参加で重力波の発生方向が今まで以上に精度よく決まった。KAGRAも国際的に大きな役割が期待できる」とコメントした。
重力波は、ブラックホールなど未知の天体の実像に迫る切り札とされ、その研究は新たな天文学に道を開くと期待されている。初観測に貢献した米国の研究者らは、10月3日に発表される今年のノーベル物理学賞の最有力候補とされている。(嘉幡久敬)