花咲徳栄の河上耀君。20日はスタンドから応援した=阪神甲子園球場
熱戦が続く夏の甲子園は22日に準決勝を迎える。選手の活躍に注目が集まるが、試合進行に欠かせないボールボーイは出場校のベンチ外メンバーが務めることが多い。彼らの見た甲子園とは。4強のボールボーイに聞いた。
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20日の天理(奈良)―明豊(大分)戦。天理は10点リードで九回裏を迎えたが、満塁本塁打などで6点を返され、なお2死一、三塁のピンチ。外野でボールボーイをしていた天理の迫川紗也(しゃあや)君(3年)は、球場全体に手拍子や歓声が広がる様子を見て不安になった。ボールボーイは声援やガッツポーズを禁止されている。「おさえてくれ」と心の中で呼びかけた。
1年の秋に、背番号8をもらったが今春は19。最後の夏は背番号をもらえなかった。これまでの人生で一番悔しかった。思いを同級生に託し、ボールボーイとして毎回、大声援を間近で感じる。「多くの人が応援してくれることを、体全体で感じた。これまで以上に感謝できる夏になった」
花咲徳栄(埼玉)の河上耀(ひかる)君(3年)は初戦の開星(島根)戦で外野のボールボーイをした。大観衆の中でも外野手が投手に「ナイスボール」「リラックスだぞ」などと呼びかける声が聞こえ、新鮮な気持ちになった。「アルプススタンドにいたら、応援にかき消されて聞こえないだろう。自分は今、甲子園のグラウンドにいる」
東海大菅生(西東京)の鈴木礼央君(2年)は若林弘泰監督(51)に「球場の雰囲気を味わってこい」と言われ、ボールボーイをするよう告げられた。背番号をもらえなかったことは悔しかったが、「期待されていると感じてうれしかった」。
3回戦の青森山田戦では試合前と五回終了後のグラウンド整備後に、マウンドにロジンを置く仕事を買って出た。ゆっくりマウンドの土を踏み、満員のスタンドをこっそり見ると、ものすごい緊張感に包まれた。「お客さんの視線がすごくて圧倒された。次は、背番号1をつけてここで投げたい」
広陵(広島)の三上仙太郎君(2年)もボールボーイをしながら、頭の中で投球してみる。大観衆の歓声を感じながら「今のままではびびりまくってストライクすら入らない」などと考える。どんな状況でも落ち着いて投げる自分をイメージする。来年、甲子園のマウンドに立ち、お世話になった人たちに恩返しをすると決めている。