狙った遺伝子を改変できるゲノム編集技術のあり方に関する日本学術会議の検討委員会は27日、生殖医療への臨床応用について、国の指針で当面禁止し、法規制も検討すべきだとする提言を公表した。
ゲノム編集による遺伝子改変は急速に技術が進歩しており、海外の一部では臨床応用を見据えた基礎研究も進んでいる。だが、提言は「予期せぬ副作用の懸念があり、社会的議論も不十分だ」として、臨床応用の当面禁止や政府による法規制の検討を求めた。委員の石井哲也・北海道大教授は記者会見で法規制を求める理由について「国や学会の指針では違反してもほとんど罰則もないので、抑止力は弱いのではないか」と話した。
一方、提言は生殖補助医療の向上に役立つ基礎研究にも言及。受精卵を使う研究に「慎重な態度が必要」として当面の差し控えを求めつつ、将来的には科学技術や社会の理解の進み具合に応じて国が慎重に審査をすべきだと結論づけた。
政府の生命倫理専門調査会は、受精卵改変を伴う研究を包括的に規制するルール作りを検討しており、提言も踏まえ、今年度中に結論を出す予定だ。(杉本崇)