東洋太平洋フェザー級王者になった清水聡(中央)=後楽園ホール
ボクシングの2012年ロンドン五輪バンタム級銅メダリストの清水聡(大橋)が2日、後楽園ホールであった東洋太平洋フェザー級王座戦で勝ち、新王者になった。同五輪ミドル級金メダリストの村田諒太(帝拳)とは31歳の同い年で、アマチュア時代からの盟友。22日に世界再挑戦を控える村田にとっては「吉兆」となった。
清水は王者ノ・サミュング(韓)に5回1分54秒でTKO勝ち。プロデビュー以来4連続KO勝ちでベルトを巻いた。「プロでは村田は形あるものを持っていない。僕が上ですよ」。左目の上を少し腫らした顔で、誇らしげに言った。
57・15キロ以下のフェザー級で、清水は長身の179センチ。遠い距離から打たせずに打つのが本来のスタイルだが、相手は頭から突っ込んで体をぶつけてきた。3回に左右のフックを食らうと「切り替えて、力でねじ伏せてやろうと思った」。長い腕を折りたたんで連打を繰り出し、4回残り約30秒でダウンを奪う。5回も被弾を恐れずに攻め、レフェリーが試合を止めた。
■五輪宿舎で同室、遠慮なし
5年前の夏、清水と村田はロンドン五輪の選手宿舎で同室だった。日本は長くこの競技のメダルから遠のいていた。まず清水が44年ぶりのメダルとなる銅メダルをつかみ、村田はそれに上乗せするように48年ぶりの金メダルを獲得した。何度も海外遠征をともにした2人の間に遠慮はない。先に試合を終えた清水は「よし、お前は明日負けろよ」と妙な激励をしたという。それが村田を発奮させた。
村田はこの日、清水の応援には訪れなかった。22日に世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王者アッサン・エンダム(仏)との再戦を控え、疲れがピークの時期でもある。「風邪をもらうといけないし、それに清水は勝つでしょう」
過去に日本の五輪メダリストは5人いて、後に全員がプロに転向した。2人以外の田辺清、桜井孝雄、森岡栄治は目のけがなどの不運もあり、世界王者になれなかった。村田と清水は、プロの世界でも歴史を塗り替える使命を共有する。
清水にとって、東洋太平洋王者は通過点だ。「これで村田を追い越しましたけど……。それもあと20日かな」。次こそ村田が世界を取ると、確信していた。(伊藤雅哉)