初の世界戦が決まった村田諒太(中央)=東京都千代田区
ロンドン五輪の金メダルから約5年。世界ボクシング協会(WBA)ミドル級2位の村田諒太(31)=帝拳=が、初のタイトルマッチに挑む。相手は、同級暫定王者のアッサン・エンダム(33)=仏。5月20日、決戦の場は東京・有明コロシアム。同級22年ぶりの日本人王者誕生がかかった注目の一戦となる。
プロ13戦目が念願のタイトルマッチになる。3日、都内で会見した村田は、関係者に感謝を述べた。「大変だったのはサポートしてくれた人たち。しっかり結果で応えたい」
ミドル級で、日本人初の五輪金メダリスト。2013年8月に27歳でプロデビューして以来、世界王者を目指してリングに立ってきた。ボクシングの聖地・米ラスベガスなど海外でも精力的に戦い、世界戦に挑戦できる位置までランキングを上げてきた。
ここ最近は、世界で戦う機は熟していたが、現実的な「壁」があった。ファイトマネーだ。上限体重72・5キロのミドル級は、世界のあらゆる才能が集まり、人気が高い階級。米国や欧州では、ミドル級のファイトマネーの額は跳ね上がり、マッチメイクは簡単ではなかった。昨年から進められていたという村田の世界戦の交渉も、難航していた。
帝拳の本田明彦会長は、当初、世界ボクシング機構(WBO)王者のビリージョー・サンダース(英)の陣営と対戦に向けて交渉していた。村田陣営は「ロンドンでの開催も受け入れる」という意向も示して話し合ったが、金銭面などで折り合わなかったという。
WBA王座が3月に空席になると決まったことを受け、帝拳は暫定王者(同級1位)のエンダムとの王座決定戦開催に向けても話し合いを進めた。開催地や金銭面について合意に至り、この日の会見の前日の2日に正式に決まった。
村田が戦うエンダムは身長180センチの右のアウトボクサーだ。戦績は、35勝2敗(21KO)。村田は「あそこまで足が止まらない選手は、ミドル級にはなかなかいない」。エンダムはKO負けはないなど、タフな相手だ。
身長182センチ、右ボクサーファイターの村田は12戦全勝(9KO)。昨年の4戦は全てKO勝ちし、「ミドルレンジやショートレンジでは僕の方が上。プレッシャーをかけて前に出て、打ち込みたい」。
過去、ミドル級の王座に就いた日本人は、竹原慎二しかいない。1995年、竹原がWBA王座を獲得したが、翌年6月の初防衛戦で9回TKOで敗れた。以来、日本人王者は出てこなかった。日本ジム所属の世界王者は、ほとんどが軽量級だ。
ミドル級には、身長180センチ前後の選手が多く、体格的に日本人に不利と言われていた階級だ。パワーとスピード、天才的な勝負勘を備えた名ボクサーが多く、過去でいえば、シュガー・レイ・レナード(米)、「石の拳」ロベルト・デュラン(パナマ)。現役では37戦全勝(33KO)の現WBAスーパー王者のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が君臨する。
村田はいう。「勝てれば、自分は強いと胸を張って言える。ベストを尽くして、強さを証明したい」(菅沼遼)