取材に応じるババカルキル氏=東京都新宿区、岡田玄撮影
かつてタリバーン政権が女子教育を禁じたアフガニスタンの中でも保守的とされる東部地域で、女性や児童の教育や医療支援などをしているNGOがある。日本のNGOの協力を受け、子どもたちにお古のランドセルを配り、学校に通うきっかけをつくっている。
特集「Dear Girls」
東部ナンガルハル州を中心に活動しているのは、NGOアフガン医療連合センター。先月来日したアブドゥル・ワリ・ババカルキル事務局長(47)は、朝日新聞の取材に「貧困の中で、教育のために闘う多くの女性や子どもを支援してほしい」と語った。
ナンガルハル州では、2001年の米軍の攻撃後、政権を追われて反政府武装勢力となったタリバーンだけでなく、過激派組織「イスラム国」(IS)の支部も活動を活発化。米軍がISに対し、非核兵器として最大の破壊力を持つとされる大規模爆風爆弾モアブを使用するなど、激しい戦闘が続いている。ババカルキルさんは「住民は疲れ切っている。教育は後回しになっている」と指摘する。
アフガンの就学者数はタリバーン政権時代の100万人から16年までに約918万人に増えたとされるが、女子は入学者の半数が初等教育を終えないまま、学校に行けなくなってしまう。15~24歳の女性の7割が読み書きができず、全国に400ある学区の半数に女性教員がいない。女子が学校をやめてしまうのは、貧困だけでなく、女子教育の重要性を認識していない父親らが少なくないためとされる。
隣国パキスタンでは女子教育の権利を訴えて銃撃されたマララ・ユスフザイさんが2014年に史上最年少でノーベル平和賞を受けたが、ババカルキルさんは「女子教育のために闘っているのは、彼女だけではない」と訴える。
通学かばんを用意できず、日本のスーパーで配られるようなポリ袋をかばん代わりにする子も少なくない。04年から日本のNGOジョイセフの協力で、日本からお古のランドセルを送ってもらい、これまでに17万個をアフガンの子どもたちに配った。受け取った子どもの中には、勉強を続け、医学部に進学したり、教師を目指したりしている人もいる。
ババカルキルさんは「ランドセルはただのバッグではない。女性が学校に通うきっかけになり、支援してもらったという記憶が、子どもたちにとって勉強を続ける動機になっている」と話した。
ジョイセフでは今年、2万個を送ることを目標にしており、10月17日までランドセルを募集している。詳細の問い合わせはジョイセフ(03・3268・5875)へ。(岡田玄)