親の迎えを待つ子どもらと遊ぶ保育士の早川桂子さん=東京都武蔵野市
「なんで保育士の給料は低いと思う?」。会社員の男性(34)は、保育士だった11年前、勤め先の認可外保育園の運営会社社長にこう話しかけられたことが忘れられない。「女性が多い職場で結婚や出産で辞めてしまう。給料として投資はできないだろ」と続いた。
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大学の保育課コースを卒業し、中学のころからの夢を実現した。だが、1年目の月給は手取りで約11万円。「こんなに安いのか……」。1年で違う会社に転職した。学生時代に同期だった男性約30人で保育士を続けている人はゼロだ。周りでは将来に不安を感じて辞めた人が多かったという。
結婚や出産後も働き続ける女性が当たり前の社会になってきているが、保育士の賃金は低い状態が続いている。国の賃金構造基本統計調査では、平均賃金は2007年から額面月21万~22万円台で、全産業平均より10万~11万円低く推移する。政府は、認可園の中心となる私立の保育士の賃金を12年度から今年度までに10%上げてきたが、それでも16年の平均賃金は月22万3千円。全産業平均との差は11万円で縮まらない。
一方で、現場では負担感が増している。東京都武蔵野市の団地の一室にある小規模認可保育所「ひまわり保育室みどり」。0~2歳児の10人を預かり、昼寝中は0歳児は5分、1~2歳児は10分に1度、呼吸を確認する。トイレやオムツ交換の時間、体温や食事の量もすべて記録する。
施設長の早川桂子さん(52)は「子どもと遊んでいるだけと思われがちだが、命を預かる仕事。気が抜けない」と話す。ほかにも、アレルギーや防災などについて学ぶため自治体や大学主催の研修を受講。家庭保育の悩みを聞くなど親への支援も欠かせなくなっている。自身の子育てで仕事を1度辞め、6年前に復帰したが、「保育士に求められていることが以前より増えている」と言う。
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