バリ島東部クルンクンの避難所では、住民らが体育館に敷いたマットの上で、ひしめき合うように生活していた=11日、古谷祐伸撮影
インドネシア・バリ島北東部のアグン山(標高3031メートル)の噴火の警戒レベルが最高の「4」に引き上げられてから3週間以上がたち、避難所で集団生活を送る約14万人の住民の不安な日々が続いている。島の経済の柱である観光業への影響も懸念されている。
火山性地震急増、住民9400人が避難 バリ島
アグン山は火山性地震が9月に急増し、同月22日に警戒レベルが最高に。国家防災庁(BNPB)は、火口から9~12キロ圏内の住民に避難勧告を出した。同山が最後に噴火したのは1963年で1千人以上が犠牲になった。その記憶もあり、島内に389カ所ある避難所の避難者数は、14日時点で当局が想定した約7万人の2倍になっている。
BNPBの担当者は11日、「いつ噴火するかは予断を許さない。噴火の規模は63年よりは弱いとみている」と取材に話した。
火口から約25キロ離れた、同島東部クルンクンの体育館を使った避難所には約800人が滞在。火口から5キロにあるセブディ村の農業スディアルサさん(66)は「63年の時は事前に警告が出たが誰も信じず、村民数百人が死んだ。今回は早めに逃げたが不安で眠れず、疲れる」と話した。
警戒の長期化で、同島の経済を支える観光業の先行きにも不安が生じている。インドネシア・ホテル・レストラン協会バリ支部によると、10~11月のホテル予約の最大20%がキャンセルされる見通しだ。
11日にはアリフ・ヤフヤ観光相が同島を訪問。「避難対象地域は島面積の2%に過ぎず、大半は安全」と報道陣に語った。ただし、噴火時の風向きによっては約60キロ離れた島南部の国際空港が火山灰の影響で閉鎖され、1日あたり約6万人が足止めされる恐れも。同相は、噴火時に島内の四つ星以上のホテルは1泊目を無料にすると発表、旅行をやめないよう呼びかけた。
バリ島は、中国からの直行便が増えたこともあって、今年に入り国内外からの観光客が急増。バリ島観光促進協議会によると、過去最高の年間900万人に届く勢いだという。(クルンクン=古谷祐伸)