自民党の二階俊博幹事長は12日、ソウルで韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と会談した。慰安婦問題の日韓合意について文氏は、韓国の国民や元慰安婦らが「受け入れずにいる」と述べ、「この点を韓日両国が直視する必要があり、もっと多くの時間が必要だということを共に認識しなければならない」と強調。韓国内の批判を踏まえた対応が必要だとの考えを示した。
二階氏は安倍晋三首相の特使として韓国を訪問し、文氏に首相の親書を手渡した。会談の冒頭では「両国政治家は協力し合わなければならない」と述べた。
韓国大統領府によると、文氏は慰安婦問題の合意について「韓国の国民が受け入れられないのが正直な現実だ。何よりも当事者である慰安婦のおばあさんたちがこの問題を受け入れずにいる」と述べた。「両国がその問題(慰安婦問題)にこだわって、他の問題の発展を遮ってはならない」とも説明。慰安婦問題は重視しつつも、北朝鮮問題などでの協力は深めなければならないとの考えを示した。
日本側によると、文氏は大統領選で公約した日韓合意の「再交渉」という言葉は使わなかったという。
ただ、合意に基づいて日本側は韓国政府が設立した財団に10億円を拠出し、この資金を財源にした現金支給事業では合意時に生存していた元慰安婦46人のうち、34人が財団の現金支給事業を受け入れる意思を明らかにしている。日本側は引き続き、韓国側に対し、合意の着実な履行を求める考えで、日韓の認識の違いを浮き彫りにした。
会談では軍事的挑発を続ける北朝鮮をめぐる問題も議論した。韓国大統領府によると、文氏は北朝鮮に対する強力な制裁が必要だとの認識を示しつつも、「北朝鮮を対話のテーブルに引き出してこそ、完全な核廃棄に至る」と発言。対話の重要性も指摘した。
文氏は、就任後初めてとなる日韓首脳会談について、7月にドイツで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行いたいとの考えを示した。日韓の首脳が相手国を往来するシャトル外交の再開についても意欲を示した。
安倍政権は今後、北朝鮮への対応を念頭に日韓関係の改善を急ぐ。日本としては首脳レベルの信頼関係を構築することで、北朝鮮への圧力強化にこれまで以上の協力を取り付ける狙いがある。
G20での日韓首脳会談を実現させ、北朝鮮問題をめぐる考えを共有し、協力を強めたい考えだ。日本での開催を調整している日中韓首脳会談も実現させ、関係強化をいっそうはかる方針だ。(山岸一生、東岡徹=ソウル、松井望美)