「チェコのトランプ」と呼ばれる「ANO2011」のアンドレイ・バビシュ党首=20日、AP
チェコは20、21の両日、総選挙(下院、定数200)を行った。チェコ統計局の発表によると、開票率99%の段階で、実業家で「チェコのトランプ(米大統領)」と呼ばれるアンドレイ・バビシュ氏が率いる与党の中道政党「ANO2011」が得票率29・8%で他を引き離し、第2党から第1党になることが確実になった。
欧州の旧社会主義国で政治的に最も安定していると言われてきたチェコにもポピュリズムの風が吹き、欧州連合(EU)との関係にも影響しそうだ。
ANOは汚職追放と既成政治打破を掲げて2012年に結成された新興政党。食品やメディア関連企業などを経営する富豪として知られるバビシュ氏は「反エリート」を前面に出し、大胆な議員定数削減などを打ち出す。EUの単一通貨ユーロの早期導入に消極的とされ、難民受け入れに反対する発言を重ねる。首相になれば、ハンガリーやポーランドとともに、EU加盟国でありながらEU批判の声を強める可能性がある。
バビシュ氏を巡ってはEUからの補助金不正受給疑惑も浮上しており、政治権力のトップに就くことに懸念の声がある。
2位は中道右派・EU懐疑派の市民民主党で、得票率11・2%。反イスラム・反EUを掲げる日系人トミオ・オカムラ氏が率いる右翼政党「自由と直接民主主義」が、10・7%で続く。現政権でANOと連立するソボトカ首相の中道左派・社会民主党は7・3%と大きく後退した。(ウィーン=吉武祐)