スポーツクライミング女子の谷井菜月=吉永岳央撮影
「あんまり、目立つのは好きじゃないんですが……」。消え入りそうな小声で語るのは、スポーツクライミング女子の谷井菜月(なつき)。「恥ずかしがり屋」な一面を持ちながら、将来の目標を聞くと、はっきりとこう返してくる。「世界一のクライマーになりたい」
女子に黒星→東京で金 柔道100キロ級の「康生2世」
28日であと1000日となる2020年東京五輪で新種目として採用されるスポーツクライミングは、従来この競技には存在しなかった「複合」という形で行われる。完登したコースの数を競う「ボルダリング」、到達した高さが勝負の「リード」、登り切る時間を争う「スピード」。1人の選手が、3種目をこなし、その総合ポイントで争われる。
複合が世界大会で初めて実施されたのが、8~9月にオーストリアで開かれた世界ユース選手権だった。この大会を制したのが、谷井。「世界の舞台は初めてだったから、緊張しなかった。負けて当然って」。国内大会でも優勝経験がなかった14歳は自然体で金メダルをさらった。
クライミングとの出会いは小学2年の夏。家族で行った地元・奈良のジムだった。普段から鉄棒でクルクル回ったり、公園の雲梯(うんてい)でずっと遊んだり。ぶら下がるのが好きだった少女にとって、「登れない壁があったことが悔しかった」。以来、ジム通いが日課となった。平日は3時間、休日は7時間の練習をこなす。母・詔子さん(46)は「家族旅行にも行けない」と苦笑交じりだ。
154センチ、41キロ。か細い体にはしかし、コーチが「浮き上がるように登っていく」と語る天性のしなやかさがある。「壁にいる時が一番楽しい」と谷井。世界一に向け、今日も上へと手を伸ばす。(吉永岳央)