支出先と金額の両方が黒塗りにされている領収書の写し=東京都庁
東京都議会(定数127)で2016年度に交付された政務活動費(政活費)の収支報告と、使途を示す領収書の写しが30日、公開された。総額の4割近くを占める人件費の支出計約2400件のうち約8割は、支出先と金額が黒塗りされて開示されず、誰にいくら支払われたかが分からなかった。朝日新聞のまとめでは、47都道府県議会で人件費の支出先と金額の両方を非開示にするのを認めているのは都議会だけで、情報開示の遅れが浮き彫りになった。
政活費の交付総額は9億180万円で、8億2874万円が実際に使われた。このうち秘書らの給与や賞与、通勤手当、社会保険料などの人件費は約3億300万円(約2400件)。その領収書を集計したところ、領収書の発行元(支出先)と金額の両方が開示されたのは交通費などの約100件だけで、両方とも黒塗りされていたのは約1900件に上った。残る約400件は支出先か金額のいずれかが非開示だった。
都議会では、政活費の人件費の領収書について、支出先の個人名と給与額などを非開示としている。都議会が領収書の全面公開を始める前々年の08年、主要会派の会議で黒塗りにする部分が決まったという。その経緯を知る都議は「氏名は個人情報なので非開示にした。都議の秘書は人数が少なく、氏名を隠しても容易に特定できるため、給与も黒塗りにした」と話す。
ただ支出先も金額も非開示だと、使途の検証が困難だ。都議会では、同居する親族に政活費から給与を支払うことなどについて「慎重な対応が必要」と注意を促している。実際に親族を雇い、政活費を給与に充てていた都議も複数いるが、開示された領収書ではこうした支出が分からない形になっている。
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朝日新聞は今月、東京都を除く全46道府県議会を対象に、政活費の人件費の領収書開示方法についてアンケートした。その結果、鳥取県を除く45議会が「支出先の個人名は非開示だが、金額は全て開示している」、鳥取県議会は「金額は非開示だが、支出先は個人名も開示している」と回答。両方を非開示にする例があるのは都議会だけだった。
大阪府の担当者は取材に「個人名を黒塗りにしている以上、給与額を出しても個人の特定はできない。金額は個人情報に当たらないので開示している」と説明した。ある県の担当者は「氏名も金額も隠しては、情報公開の意味がない」と話した。
鳥取県が個人名まで開示しているのは、架空の雇用を防ぐ狙いがあるという。担当者は「名前を公開することで、勤務実態のない人の給与などに政活費を充てる不正を防げる」と話す。個人名を開示しているため、給与の金額などは個人情報に当たるとして非開示にしているという。