「子どもの“困”に寄り添うノート」を手にする茂木美知子さん=神戸市長田区
ひとり親家庭を支援するNPO法人「ウィメンズネット・こうべ」(神戸市)が、困窮の中で育った経験を持つ人たちの声を聞き取り、小冊子「子どもの“困(こん)”に寄り添うノート」を出版した。支援したいと考えている大人向け。子どもたちが抱える問題を、具体的に理解してもらうのが狙いだ。
ウィメンズネット・こうべは、DV被害者を支援するために1992年に設立された。2013年からは、子どもたちのために無料の学習支援や居場所づくりを始めている。
冊子は、すでに成人した6人の経験談を第1章に収録。子どもの頃、ウィメンズネットの出張授業をきっかけに虐待やDVとは何かを知り、両親から逃れた女性や、児童養護施設で出会った指導員との文通で、生きる力を得ていた女性の証言を紹介している。
兵庫県の女性(23)は中2の時、母と兄と3人で父のDVから逃れ、ウィメンズネットのシェルターに身を寄せた。公営住宅に転居し、生活保護で暮らした。定時制高校に通いながら弁当屋のバイトで生活費を稼ぎ、家事もこなし、奨学金で大学に進んだ。
だが、母は恋人と出歩き、兄はギャンブルにおぼれ、家庭内は不安定だ。
苦しい時に思い出したのは友人、NPO職員の存在だった。「傷付き、疲れ果てていたわたしの心を、(中略)優しさという愛で大事に大事に包み込んでくれたから、わたしは、いつかまたこの先の人生で、わたしを大切に思ってくれる人に出会うことができるのかもしれないと信じてみようと思えた」と語っている。現在は服飾関係の会社に就職し、元気に働いている。
聞き取りを行ったスタッフの茂木(もてき)美知子さん(66)は「子どもは親を気遣い、なかなか本音が言えない。大人は意識して、子どもたちのしんどさや何をして欲しいのかに、もっと耳を傾ける必要がある。その覚悟や意識づけのひとつになれば」と話している。
第2章では、居場所作りに関わったスタッフの思いを紹介している。A5判、36ページで500円(送料別)。問い合わせは事務局(電話078・734・1308、メールwomens-net-kobe@nifty.com)へ。(山内深紗子)