事件現場のアパート(左奥)近くには、たくさんの花束などが供えられていた=20日午前11時51分、神奈川県座間市、三浦淳撮影
「交流会やります。みんな生きづらさ真っ盛りです。どうせ死ぬならここで会おう」。新潟市の会社員月乃光司さん(52)はこんなメッセージをツイッターでつぶやき続けてきた。
たどり着いた先は白石容疑者 即答の返事に落ち着いた
座間9遺体事件
右手首にはかつて自殺を試みた傷痕。15年前から新潟や東京で「こわれ者の祭典」を開き、悩みや思いを語り合ってきた。神奈川県座間市の事件の被害者の姿は若い参加者と重なる。「話を聞いてくれる理解者を求めて力を振り絞り、一歩踏み出したんでしょう」
月乃さんが悩む人たちとつながるきっかけは、大半がツイッターなどのSNSだ。「死にたい」という言葉は、思い詰めた結果かもしれないし、生きづらさを紛らわせたいという願いかもしれない。「自分ではどうにもならない苦痛の原因に向き合う余裕がない時、逃げ場にもなる。どん底から回復に向かうための糸口なんです」
SNSが事件に悪用されたと報じられると、政府は再発防止策の検討を始めた。被害者全員の身元が発表された10日、関係閣僚会議を開催。菅義偉官房長官は自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策を指示し、会見で「ツイッターの規制等が検討の対象になる」との見方を示した。
ツイッター社は事件後、「自殺や自傷行為の助長や扇動を禁じる」とのルールを追加。投稿を見つけたら削除を要請するという。
なぜネットが負の感情のはけ口になるのか。
孤立する若者への取材経験が豊富なフリーライターの今一生(こんいっしょう)さん(52)は「匿名を使って本音をさらすツイッターは、ちょうどいい『温度』で共感や肯定だけを得やすい。自殺をほのめかす重い気持ちを打ち明けても、同じ心情で集まったフォロワーから余計な励ましや根性論による批判にさらされることもない」と分析する。だからこそ、検討が始まったSNS対策には「単に消せば良いという発想は弱者を追い詰めてしまうだけだ」と批判的だ。
では、こうしたつぶやきに、何ができるのか。月乃さんも今さんも「共感が大切」と口をそろえる。
「死にたくなる時ってあります…