世界に広がる忍者
忍者ブームが世界に広がっている。国内の忍術道場は稽古に励む外国人で熱気にあふれ、欧米では多様な忍術書が出版され、米国では忍者スピリットを経営に生かすべきだと説くビジネス本も出版された。失敗を恐れず、チャレンジを続ける忍者の精神や自然の中で生まれた忍術が、外国人の心を魅了しているようだ。
11月末の平日の午後6時すぎ。千葉県野田市の住宅街にある一戸建てに、体格の良い人影が次々に吸い込まれていった。玄関を入ると、広い畳敷きの部屋に100人以上の男女が円形に並んでいた。米国やドイツ、フランス、カナダ、ロシア、コロンビア……。大半が世界各地から訪れた外国人だった。
「武神館(ぶじんかん)道場」。戸隠(とがくれ)流忍法など九つの流派を修めた武道家の初見良昭(はつみまさあき)さん(86)が館長を務め、忍術の中でも武道に特化し、いわば現代忍術をつくりあげた。年に数回、この道場で稽古するために来日する外国人が後を絶たない。
稽古が始まった。木刀を持った男性が初見さんに突きかかった。初見さんはふわっと体を開き、なでるように相手の手首あたりに触れる。気がつくと男性は畳の上に転がっていた。男性は「初見先生が体をかわした瞬間、その姿が見えなくなった」と言った。別の男性は初見さんと向き合った感想を「壁に投げたボールは戻って来るのですが、その壁がどこにあるのか分からない感じ」と話した。
初見さんは幼少期から柔道など…