認可保育園の保育士配置や保育スペースの基準について、政府は手厚い独自基準を持つ市区町村が下げやすくする仕組みを導入する。都道府県ごとに協議会で国基準に統一することを決めてもらい、対象自治体に一斉に下げてもらうことを想定している。待機児童対策の一環だが、保育の質の低下を懸念する声もあり、どれだけ緩和する自治体が出るかは不透明だ。
政府の規制改革推進会議が11月、「国を上回る基準を設けている自治体に待機児童が多い」と指摘し、基準緩和を議論する協議会の設置を答申。これを受け、政府は近く閣議決定する約2兆円の政策パッケージに設置を盛り込む。来年の通常国会で子ども・子育て支援法を改正し、都道府県が任意で待機児童対策に関する協議会を設置できるようにする。自治体関係者のほかに、保育園事業者や有識者らにも参加してもらう。
国基準は、1人の保育士がみる子どもの人数を「1歳児で6人に1人」などとしている。政府は昨年3月、手厚い独自基準を持つ自治体にこの基準まで引き下げるよう要請した。約3千人分の待機児童の解消を見込んだが、ほとんどの自治体が要請を受け入れなかった。
政府関係者は、質の低下を懸念する保護者らの声を受けて「市区町村単独では基準を下げづらかった」と分析。都道府県単位で一斉に基準を下げる仕組みなら緩和しやすいと見ている。
ただ、政府は質の改善に向けて財源が確保できれば保育士の配置基準を今より手厚くする方針を決めている。市民グループ「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「これまでの流れに反していて無責任だ。待機児童を認可園に入れるために質を落とすとは信じられない」と話している。(西村圭史)