NHKは27日までに、来年度からの受信料値下げを見送る方針を固めた。予算の議決権を持つ経営委員会が2018~20年度の3カ年の経営計画と合わせて検討するとしていた。視聴者への還元策として、経済的に困難な状況にある学生や一部の社会福祉施設への受信料免除の拡充を盛り込む方向で調整している。
経営計画は近く経営委で大筋、了承される。昨年11月、籾井勝人前会長が地上契約で月額1260円(口座・クレジット払い)の受信料を今年10月から50円程度値下げすることを提案。東京・渋谷の放送センター建て替えの積み立てが目標額に届き、年間200億円以上の余剰金が発生することから「視聴者に返すのが当然」とした。だが、経営委側は「時期尚早」などとして提案を見送っていた。
今年1月、経営委員時代から値下げに慎重だった上田良一氏が会長に就任。18年度に放送開始を控えるスーパーハイビジョン(4K・8K)の設備投資や、20年東京五輪・パラリンピック、働き方改革などに費用がかかることから、執行部内でも値下げの議論は活性化しなかった。NHK幹部は「一度下げれば、視聴者の反発もあり値上げはできなくなる。別の形での還元が免除の拡充だった」と話した。
一律値下げに代わって、視聴者への還元策として検討が進むのが免除範囲の拡大だ。現在、生活保護受給者や小中学校で児童生徒用テレビなどが対象。近年は公平性の観点から対象を縮小してきたが、会長の諮問機関が今年9月の答申で免除に言及したことを受け、執行部側が見直し作業を進めていた。免除は段階的に拡大し、3年間で100億円規模になる見通し。(滝沢文那、小峰健二)