対局後に感想を述べる藤井聡太四段(左から2人目)と久保利明王将(右から2人目)=名古屋市中村区
将棋の中学生棋士、藤井聡太四段(15)が10日、名古屋市内で開かれた将棋イベントに参加し、早指しの非公式戦でトップ棋士の一人、久保利明王将(42)と対局した。藤井四段は中盤までに持ち時間の20分を使い果たして秒読み将棋が続いたが、106手で勝利。対局後に「序中盤は苦しくしてしまい力の差を感じたが、粘って逆転に持ち込めたのは大きな収穫だった」と話した。
公式戦も含め初めての対戦。振り駒で先手番となった久保王将が得意の中飛車に構え、藤井四段が居飛車で対抗した。現地で大盤解説した鈴木大介九段(43)の解説によると、得意戦法で臨んだ久保王将がリードしたが、藤井四段が得意とする終盤で逆転勝ちを収めた。
久保王将は「序中盤はまずまずの展開で指せたかなと思う。どんどん差が詰まったなという印象。どの手が悪かったのか? 気がついたら悪くなって、自玉が詰まされていた」と振り返った。さらに「最終盤で自分の読みにはない好手を指された。終盤の切れ味がすごく、やっぱり実力がある棋士だと感じた」と評価した。
対局前には藤井四段のトークショーもあった。幼少期の写真とともにこれまでを振り返りながら「プロ棋士への漠然としたあこがれはあったが、小学3年のときに全国小学生倉敷王将戦で優勝して自信をつけ、プロをめざしてみようと思った」と話した。
会場の少年からは対局で緊張しないコツを問われ、「最近はあまり緊張しなくなった。以前は最終的な勝ち負けの結果にとらわれていたが、最近は目の前の一手一手を積み上げていこうと思うようになったのが良かった」と応じた。
今年6月に公式戦29連勝の新記録を達成した藤井四段。イベント後の取材で自身にとっての今年の漢字を問われ、「成」と答えた。「プロ棋士になり、成長できた1年だったと思うので」。来春に高校進学を控え、「将棋だけでは得られないものがある。高校生活を通じて視野を広げていきたい」と期待する。
5日に史上初の永世七冠を達成した羽生善治竜王・棋聖(47)については「幼いころからあこがれていた大きな存在。自分もプロ棋士になって将棋界の厳しさを実感している。ものすごいことだと思う」とたたえた。
イベントは、CS放送の囲碁将棋チャンネルが運営するインターネット動画配信サービス「将棋プレミアム」の主催。約450人の将棋ファンが見守った。対局の模様は17日に将棋プレミアムで配信される予定。(滝沢隆史、佐藤圭司)