東京都世田谷区の区立小学校で組み体操の練習中、転倒し頭痛などの後遺症が残ったとして、区内の中学3年の男子生徒(15)が区と当時の担任に約2千万円の損害賠償を求めた訴訟は11日、東京地裁(鈴木正弘裁判長)で和解が成立した。区が生徒側に謝罪し和解金1千万円を支払い、再発防止に努める内容。
生徒側によると、再発防止策は、組み体操の指導前に教諭に研修を受けさせ、安全に配慮した指導を徹底させる内容。一方、元担任は謝罪を拒んだため、和解は成立せず、生徒側が訴えを取り下げるという。生徒側は「戦いを続けることは無駄と判断した」という。
訴状などによると、生徒は2014年4月、運動会の練習で2人組で倒立をしていて転倒。下にマットが敷かれていなかったため、生徒は体育館の床に後頭部や背中を打ち付けた。直後から激しい頭痛や吐き気などの症状を訴え、約4カ月後に脊髄(せきずい)を守る膜が傷ついて髄液が漏れる「脳脊髄液減少症」と診断された。
和解後に会見した母の定松啓子(ひろこ)さん(47)は「組み体操自体に反対はしないが、見栄えでなく出来る範囲で安全に配慮するべきだ。事故当時何があったか、本当のことは結局分からず、元担任とはわかり合えなかった」と憤った。
世田谷区は「今後は学校事故の未然防止及び再発防止策に教育委員会とともに取り組む」とする保坂展人区長のコメントを出した。(後藤遼太)