二回表、ピンチでマウンドに集まる滝川西の選手たち=12日、阪神甲子園球場、北村玲奈撮影
(12日、高校野球 仙台育英15―3滝川西)
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12日の第1試合に臨んだ滝川西(北北海道)の選手たちは雪がグラウンドを覆う冬の間、ボールを使った練習をしない。代わりに取り組んできたのは、資格試験の勉強を通じた集中力アップだ。
秋の大会が終わると、北海道は長い冬が始まる。その間、滝川西の野球部員たちは平日は午後7時ごろまで、週末も朝から夕方まで教室で勉強漬けだ。そのかいもあり、ベンチ入りメンバーのほぼ全員が全国商業高校協会(全商)の検定に3種類以上合格した。
三上竜輝君(3年)は全商の検定4種類に合格し、簿記の資格も取った。同じように勉強したOBからは「冬に野球をしないと甲子園に行けないぞ」とも言われたが、「集中力をつけたことが野球にも生きた」と話す。受検を終え、再びボールを握った時は「やっとだ!」と喜びが爆発し、練習にも力が入った。
商業高校として設立された滝川西は「就職にも進学にも有利」と資格の取得を促しており、多く取得した生徒を表彰する制度もある。野球部が取り組む背景には、この校風もある。
ただ、勉強が得意な選手ばかりではない。捕手の細矢翔平君(同)は、受検した全ての検定で1回以上落ちた。目標としていた三つめの資格にようやく合格したのは、夏の地区大会が始まる直前の6月。それでも、苦しい勉強を乗り越えたことで「苦手な打撃練習にも進んで取り組むようになった」という。
チームは数年前から、勉強に加えてウェートトレーニングもするようになり、小野寺大樹監督は「この代は例年になく、真面目に取り組んだ」と感心する。集中力と筋力をつけた選手たちは、北北海道大会で接戦を相次いで制し、19年ぶりとなる選手権大会出場を手にした。
甲子園の初戦は仙台育英に大きくリードされながらも集中力を途切れさせず、七回に3点を奪った。試合は3―15で敗れたが、主将の堀田将人君(3年)は「冬に培った集中力を生かせた。大観衆の中で試合が出来たことは、今後の人生にもいかせると思う」と語った。(天野彩、笠原真)