大気中の天然糀菌を採取し、日本酒を造った藤枝北高食品サイエンス部の部員たち
高校生が大気中の天然糀(こうじ)菌を採取し、自らは飲めない日本酒を造る――。静岡県の藤枝北高校食品サイエンス部の取り組みが注目を集めている。「味見は御法度」のプレッシャーの下、地酒2種を開発。それぞれ年2千本以上を完売した。
高校のある志太地域は「志太杜氏(とうじ)」で知られる酒どころ。2013年、「発酵を研究テーマに、日本酒を造ってみないか?」という西尾真一教諭(50)の提案に、部員らがのった。大気中にはそれぞれの地域に特徴的な天然糀菌が生息している。生徒たちはまず、地元の糀菌を採取することから始めた。
シャーレの中に蒸した米とツバキの木灰を入れ、3分ほど空気を入れる。その後2~3日、定温器で36~37度に保つと、米の周りに糀が繁殖する。カビ毒が出ないことを確認したら、いざ酒造りへ。
だが、高校生はアルコールが飲めない。風味はどうするか。創業175年の地元の酒蔵、杉井酒造が協力した。杉井均乃介社長(60)は「市販の糀に比べ、酒造りに適しているか分からない天然糀菌を使うのは一か八かだが、面白い」と思った。高校生らしくすっきりフルーティーな味を目指し、酵母を選んだ。蒸した米を広げて糀をつくる作業や、タンクをかき混ぜる「櫂(かい)入れ」は、生徒たちも加わった。
2014年、藤枝の水田の稲穂から採取した天然糀菌と地元の酒米「誉富士(ほまれふじ)」を使った日本酒「米の花を紡ぐ物語」が完成した。
さらに昨年から、藤枝から約1…