東芝は13日、半導体事業で協業する米ウエスタンデジタル(WD)との対立を解消して和解したと正式に発表した。半年以上にわたる係争に終止符を打ち、東芝が進める半導体子会社「東芝メモリ」の売却を、WDは容認する。東芝は1兆円超の売却益を得られる可能性が高まり、経営危機からの脱却に向けて大きく前進する。
東芝の巨額損失問題
WDは5月に国際仲裁裁判所に申し立てた売却の差し止めを、東芝はWDに対する妨害差し止めの提訴をそれぞれ取り下げる。両社は東芝メモリの四日市工場(三重県)への共同投資を続け、現在の共同生産体制も少なくとも2027年末までは維持する。新設する北上工場(岩手県)への共同投資も始める方向だ。WDは、東芝メモリの将来の株式上場も容認する。
東芝はWDとの係争に敗れれば、東芝メモリの売却が白紙になるおそれがあった。売却は各国で独占禁止法の審査中で、これを通過すれば、売却益を得られる。今月に実施した約6千億円の増資に続く巨額の入金で、株主資本は15年の不正会計発覚前の水準まで回復する見通しだ。
東芝メモリも、共同投資で工場の設備増強を加速できる。半導体メモリーで世界首位の韓国サムスンを追う体制を整える。
東芝は米国の原発事業の失敗で、借金が資産総額を上回って株主資本がマイナスになる債務超過になった。来年3月末までに解消しないと上場廃止になるため、東芝メモリの売却益をあてると表明。WDは「協業契約違反」であると主張したが、東芝は9月に韓国の半導体大手SKハイニックスも加わる「日米韓連合」への売却を決め、対立が激化した。
そこで東芝は四日市工場への共同投資を提案し、和解に応じないと単独投資に切り替える姿勢も示した。WDは共同投資に参加しなければ、来年から生産が始まる最新鋭のメモリーを調達できなくなり、経営が苦しくなる。両社は今月になって和解することで大筋合意し、詰めの協議に入っていた。