「普通の家庭の主婦の物語をロング版として映画にできるのはありがたい」と話す片渕須直監督=名古屋市中区
戦時下の主婦の暮らしを通して戦争を見つめたアニメーション映画「この世界の片隅に」が、昨年11月の公開から1年以上経ったいまも異例のロングランを続けている。片渕須直監督は「戦争を知識としては知っているが、体験的に味わえる空間として映画を作った。(主人公の)すずさんがいまも本当に存在しているように思ってもらえたからではないか」と話す。
「この世界の片隅に」舞台を巡る
核といのちを考える
米国やフランスなど約40の国と地域で公開された(予定も含む)。「日本でも米国でも『親に見せたい』と言ってくれる人が多かった。国による受け止めの違いはない。戦争のそれぞれの国の片隅を、それぞれの国の視点で描いた作品が作られればうれしい」
ロングバージョンの制作が発表されたばかり。昭和19年秋と昭和20年秋のエピソードが追加されるという。「すずさんの内面に迫る重大な事件があったシーン。彼女の人間的な側面がもっと浮き彫りになる」。映画化で脚本や絵コンテは用意していたが、129分の本編には収まりきらなかった。「160分ぐらいになる予定。来年の年末ごろには公開したい」という。
広島・呉を舞台に、18歳で結婚した女性の生活を淡々と描いた作品。派手な戦闘シーンはなく、日々のささやかな幸せやユーモアをつづる。こうの史代の漫画が原作で、全国で200万人以上を動員。日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞や菊池寛賞など数々の栄冠に輝いた。名古屋の伏見ミリオン座で23~29日、再上映する。(滝沢隆史)