ローマ・バチカンとのテレビ中継で学生らと対話するローマ法王=18日午後5時53分、東京都千代田区の上智大、恵原弘太郎撮影
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(81)と日本の若者が映像回線を通じて対話するイベントが18日、上智大学(東京都千代田区)で開かれ、大学生や高校生約700人が集まった。法王は若者たちに「25歳で定年退職したようになってはいけない。現状に満足しないで、活動を続けなさい」などと、活発に動くよう呼びかけた。
バチカンと日本の大学をこうした形でつないで、対話したのは初めて。法王が、同大設立母体のイエズス会出身で、同大幹部が同じアルゼンチン出身で親しいことから実現したといい、他のイエズス会系の学校の生徒らも参加した。
六甲学院高校(神戸市)2年の石井麟太郎さん(16)は日本のイメージを聞いた。約30年前に来日したという法王は「理想と深い可能性をもち、信仰心もあり働き者の国民だ」としたうえで、競争が激しかったり、消費主義に走ったりすることもあると指摘。再来日にも意欲を見せた。
同大留学生でミャンマー人のチョウトゥアンさん(23)は、祖国でイスラム教徒ロヒンギャの人々が迫害されていることを念頭に「世界で、宗教はどう役目を果たせるのでしょう」と尋ねた。ミャンマーを訪れたばかりの法王は、「宗教は人を助けるが、一部の人が原理主義に走り、宗教の名の下にテロを起こすこともある」と警鐘を鳴らした。
スペイン語学科4年の小早川麻美さん(22)はペルーに留学し、貧富の格差を目にした。「貧困と環境問題をどう解決していけばいいのか」と聞くと、法王は「環境と社会は切り離せない。利益ばかりを追求し、土地を搾り取れば環境は破壊され、人も仕事を失ってしまう」と答えた。
イベント後、栄光学園高校(神奈川県鎌倉市)2年の佐藤航貴さん(17)は、「色々と話したいことがあり、それが全て伝わってきたので感動した」と話した。上智大学神学部3年生の吉田南菜子さん(20)は「日本のイメージを直接教えて下さって、うれしかった」と述べた。(平山亜理)