WBOミニマム級王座決定戦でフリアン・イエドラス(右)を攻める田中恒成=2015年5月、細川卓撮影
世界ボクシング機構(WBO)ライトフライ級チャンピオンの田中恒成(22=畑中)が6日、王座返上とフライ級転向を発表した。名古屋市内での記者会見でまず話したのは、自分のけがで白紙となった統一戦の対戦相手へのおわびの気持ち。会見前日、1人で謝りに出向き、きっちりとケジメをつけた上で3階級制覇へ挑む。
田口良一への謝罪の言葉
「お互い本気になって、期待をさせて、申し訳ない気持ち」。年内の王座統一戦で拳を交える予定だった世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級王者の田口良一(31=ワタナベ)への謝罪の言葉を、最初に語った。
2015年5月に日本最速のプロ5戦目でWBOミニマム級王者になった田中は、王座を返上してライトフライ級に転向し、16年末に日本最速タイとなるプロ8戦目で2階級制覇を達成した。2度目の防衛に成功した今年9月の試合で両目の眼窩(がんか)底を骨折、予定していた田口との統一戦が消滅した。
畑中清詞会長によると、田中は「どうしても(田口との統一戦を)やらせてくれ」と言っていたという。だが、続けるには厳しい減量が負担となり、「健康管理上きつく、本人も、ライトフライ級のウェートではベストパフォーマンスができる自信がないとなった」と畑中会長。11月終わりに階級変更を決断し、12月1日付で王座返上、同6日に会見となったが、田中は「会見の前に田口選手に直接、一言、すみませんと言いたかった」。
喫茶店で1時間
4日に知人を通じてアポを取り、5日に名古屋から1人で東京都内のワタナベジムを訪れ、建物の外で練習を終えた田口が出てくるのを待ったという。「寒かった。でも、ジムに入って練習をやっているのを待つのは何か違うので」。一言だけ伝えるつもりだったが、一緒に喫茶店へ行き、1時間ほど話した。
「一番の原因が減量で、変な意味で逃げるヤツではないとも分かってもらえていたので、『またお互いに頑張ろう』と。『全然気にしなくていいからフランクにいこうよ』とも。ギリギリになっちゃったけど会見前に行けてよかったです」
ふっくらとした顔の田中は「9月の試合が終わってからは練習も全然でしたし、モチベーションも下がって、気も抜けていた。太っているだけなんですけど、今は62キロくらい」。目のけがについては「気になるところもなく、次の試合では問題ないと思います」と話し、「ちょっと前に軽く動き始めた。徐々にこれから上げていこうかなあというところ」。畑中会長はWBOに来春、挑戦者決定戦をしたいと伝えてあるという。
「やり残したというか、満足してライトフライ級卒業とはならなかった。田口選手とやって勝てたら満足できると思ったんですが、昨日行けて、気持ちを新たに前向きに、笑顔で、フライ級でまた頑張りたい」。ケジメをつけた田中は「何もなかったですよ、とスルーするつもりはなかった。前向きにやっていきますのでよろしくお願いします」と頭を下げた。(松本行弘)