栃木県今市市(現日光市)で2005年に女児(当時7)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われ、一審・宇都宮地裁で無期懲役判決を受けた勝又拓哉被告(35)の控訴審第4回公判が21日、東京高裁であった。検察側が被告の飼い猫の毛だと指摘する遺体に付着した獣毛について、被告側の鑑定人が「被告の猫のDNA型は国内で約2割いる種類であり、毛の同一性の議論は不適切」と証言した。
事件は凶器がみつからないなど直接的な物的証拠が乏しく、獣毛をどう判断するかが控訴審の大きな争点の一つになっている。午後からは検察側が反論する。
この日、証言したのは、進化ウイルスを研究する京都大准教授の宮沢孝幸氏。宮沢氏は遺体に付着した獣毛について、「DNA型のデータからは、遺体の獣毛と被告の猫とは一致せず、被告の猫に由来しない可能性が高い」と証言した。
検察側は一審で、遺体に付着していた獣毛は被告の飼い猫と一致すると考えて矛盾しないと主張。この日午後からは検察側鑑定人の証人尋問がある。
勝又被告は05年12月に女児を殺害し、茨城県常陸大宮市内の山中に遺体を捨てたとして、14年に殺人などの罪で起訴された。被告は一審で無罪を主張。裁判員裁判だった宇都宮地裁は16年4月、「客観的事実から犯人性を認定することはできない」としつつ、自白の信用性をもとに無期懲役の実刑判決を出している。(若井琢水、長谷文)