SNSを通じた救助要請の実態を説明する東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授=20日午後3時2分、東京都港区、伊藤繭莉撮影
九州北部豪雨と今後の対策をテーマにした日本学術会議の公開シンポジウムが20日、東京都内であった。ソーシャルメディアで拡散した「救助要請」について、東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害情報学)が「真の救助要請が埋没した。『発信しない』マナーの向上が課題」と報告した。
佐藤さんは、東日本大震災の際に投稿されたツイート160万件を分析。ソーシャルメディアが支援のニーズや被害を把握できるかを調べてきた。
九州北部豪雨では、ツイッターで検索キーワードに当たる「ハッシュタグ(#)」に「救助」を付け加えた投稿が拡散した。しかし、実際の救助活動に結びついた投稿は1件だけだったことが朝日新聞の分析で判明している。被災者らが実際に救助を求めた投稿は、ニュース画像を貼り付けたり救助要請の投稿方法を紹介したりする投稿に埋没しがちだったという。
ただ、東日本大震災や熊本地震当時に比べると、被災者が救助を求める投稿は「場所の説明や文章が充実してきている」と佐藤さんは評価。一方で、被災地外からの大量の投稿によって、こうした救助要請が見つかりづらくなる状況は「むしろ悪くなっている」と警鐘を鳴らした。「投稿者に悪気がないことが大きな問題」とし、課題として「被災地以外の人は『発信しない』マナーの向上」を挙げた。(伊藤繭莉)