全日本選手権に向け、本番レースを想定した練習に臨む渡辺啓太=大阪市の浪速スポーツセンター
4年前の悔しさをばねに、一回りも二回りも成長した。スピードスケート・ショートトラック男子の渡辺啓太(25)=阪南大職=が、16日に開幕する平昌五輪代表選考会を兼ねた全日本選手権(名古屋)に、初の五輪代表を目指して挑む。前回王者は「2連覇はもちろん、平昌で金を狙うつもりでいる。言葉にして堂々と言えるようになったし、自分ならできると信じている」。自信に満ちた表情で語る。
ソチ五輪シーズンは、ワールドカップ(W杯)の代表に選ばれたが、13年12月にあった代表選考会で結果を出せず、五輪出場を逃した。14年に阪南大を卒業後は、阪南大の職員として引き続き支援を受けられるようになり、平昌を目指した。しかし、いくら追い込んでも結果が出ない。「空回りしていた。試合前に勝つイメージをしようとしてもどうしてもできなかった」。14年12月の全日本選手権は13位に沈んだ。
変えた食生活
そこから、地道に練習を積み重ねた。スピードを出すためにより低い姿勢で氷を押すことを意識。氷上だけでなく、毎日の練習前にフォームを何度も確認した。16年1月の全日本選手権で3位と復調した。
食生活や考え方も変えた。ソチ前は体が重くなることを恐れ、試合前には炭水化物を抜いていた。昨夏からは栄養士のアドバイスで、試合で力を出すため、直前に炭水化物もとるようになった。普段は一人暮らし。外食は控えて自炊し栄養にも気を使う。筋力トレーニングも増やした。4年前より約5キロ増え、パワーが増した。メンタルトレーナーの指導で具体的にレースを想定した緻密(ちみつ)なイメージトレーニングもとり入れた。本番で安定して力が出せるようになった。
今年1月の全日本選手権で念願の初優勝。指導する阪南大の杉尾憲一監督は「初のタイトルで自信がついて頼もしくなった。気持ちの波もなくなり、安心して見られるようになった」。
男子の五輪出場枠は5。9月の全日本距離別選手権、W杯派遣選手選考会、全日本選手権の3大会の成績をポイント化した結果を基に、代表選手が決まる。現時点で、渡辺は3位。全日本選手権で優勝すれば文句なしの代表だ。(橋本佳奈)