ＳＭＡＰ解散から１年。存続を求めるファンたちが繰り広げた多彩な活動が、ファンの手で一冊の本にまとまり、今月出版された。３７万筆以上を集めた署名活動、メンバーを応援する路面電車など各地に広がった取り組み……。思いを届けようとつながった記録だ。

「ＳＭＡＰにありがとう！」と題したムック本（税別９２６円）。長年コンサートに通ってきた５０代の女性ファンが企画した。活動名は、くやんさん。

きっかけは、解散騒動さなかの昨年６月、ファン仲間から「会いたい」と連絡があったこと。「心がざわついている人がたくさんいた。できることはないかと考えた」。ＳＮＳでの情報交換が盛んとはいえ、ファン層は幅広い。スマホを持たない人もいる。本の出版に関わった経験があり、「紙媒体でつなげたい」との思いを温めてきた。

くやんさんは今年６月から４カ月余り、仕事の合間を縫って各地で活動するファンを訪ねて回った。

砂浜に「砂文字アート」を続けた福岡。路面電車の装飾は広島、愛媛、長崎、鹿児島で。ＳＮＳ上でメンバーを模した手芸品を発表した「ス芸部」……。「本にすれば自分たちファン、世の中に対しても、ＳＭＡＰへの思いを形で残せる」。取り上げた活動は大小１６に上る。解散前日に朝日新聞に載った、８ページにわたる感謝を伝える全面広告も再掲した。

出版元探しは難航した。２０社以上断られ、唯一引き受けてくれたのが、健康関連が主で芸能とは縁遠いマキノ出版（東京）。書籍編集部の小川潤二さんは「熱意に押された」と話す。

昨年１２月３１日の解散からまもなく１年。くやんさんは「テレビで見られなくなって寂しい。好きだという思いを共有したい」。

本の最後、ＳＭＡＰ解散騒動などで注目された芸能界の契約問題に詳しい弁護士へのインタビューを載せた。「日本で活躍する全てのタレントが伸びやかに活動できる制度の創設を」との願いを込めて。（滝沢文那）