龍台寺の鐘突き堂(富岡町提供)
原発事故で全町避難となった福島県富岡町の臨時災害放送局「おだがいさまFM」(同県郡山市)が31日夜、町内の除夜の鐘を全国に向けて生放送する。今年4月に一部の避難指示が解除されたが、町民の大半はいまも県内外に避難したまま。古里の鐘の響きに耳を傾けてほしいという。
31日午後11時35分ごろから約15分、1490年創建という富岡町の龍台寺(りゅうだいじ)からリポーターが生中継する。インターネットなら「サイマルラジオ」から、スマートフォンなら「リッスンラジオ」などのアプリをダウンロードすれば、どこからでも番組が聴ける。
おだがいさまFMは震災2年後の2013年から毎年大みそか、事前に町で録音した寺の鐘を「除夜の鐘」として放送してきた。ただ4月に帰還困難区域を除き、避難指示が解除されたため、同FMは龍台寺と交渉し、鐘突きの生中継を決めた。震災前は大みそかに300人以上が訪れたという龍台寺は避難指示の間に雨漏りがひどくなり、天井が落ちるなどしたため、再建中だ。
東京電力福島第一原発から20キロ圏内にある富岡町は町民が全国各地に避難した。約1万6千人いた住民は現在、約380人。「すでに生活基盤ができている」などの理由で、帰還しない町民も多い。
生中継を企画し、当日はスタジオでパーソナリティーを務める久保田彩乃さん(32)は「富岡に帰れない人たちも、帰らない人たちも、富岡の鐘の響きを聞いて古里を思い浮かべてほしい」と話している。(高田誠)