練習を見守る高木監督(右から2人目)
サッカーのJ1で史上最西端のクラブが始動した。初めて「ゼイワン」に挑む長崎だ。通販大手ジャパネットホールディングス(HD)の支援を受け、昨季J2で2位と躍進したチームは、かつて長崎の強豪だった国見高OBらを続々と補強。一方で被爆地域に支えられているクラブは原爆資料館を訪れるなど、平和への理解をより深めている。
長崎市の北東にある大村湾に面した同県諫早市内のサッカー場。8日朝。約450人の観客に見守られながら、新加入選手も混じって今年初の練習を行った。
「ゼイワン」とはクラブの高田明社長(69)の出身地、長崎県平戸地方の発音で「J1」のこと。昨年4月の社長就任時から使ってきたフレーズで、昨年11月にJ1昇格を決めた際もクラブのホームページは「すべての皆さまに感謝を込めて。さぁ、来年はゼイワンですよ!!」と載せた。
強豪国見高OB中心に発足
クラブは全国高校選手権を6度制した国見高のOBらを中心に結成された「国見FC」などが母体となって、2005年に産声を上げた。
元日本代表FWで就任6年目となる高木琢也監督(50)も同校の出身。J1を戦う今年は国見黄金期の多くのメンバーが戻ってきた。FC東京から元日本代表DF徳永悠平(34)、神戸から第80回選手権で2連覇を達成したときの主将GK徳重健太(33)、福岡からDF中村北斗(32)がいずれも完全移籍で加入した。
自らが育った土地でJ1に駆け上がったクラブ。そこでプレーすることを決断した選手の意識は高い。FC東京に14年在籍した徳永は「正直(長崎が)J1にこんなに早く上がってくるとは思わなくて驚いている」と話す一方で、「ここで自分が結果を残したいという気持ちで帰ってきた。昔から地元でプレーしたいという気持ちがずっとあった」。
クラブは今年から新しい取り組みも始めた。平和研修だ。「人間が求めているのは平和。そういう思いを素直に出していけるチームにしたい」と高田社長。クラブの正式名称「V・ファーレン長崎」の「V」には、オランダ語で平和を意味する「VREDE(ブレーダ)」という願いも込められている。
9日、長崎市内の神社で必勝祈願をした後、同市内の原爆資料館を監督、選手らが訪れた。今季新潟から加入したFW鈴木武蔵(23)は初めて資料館を見学した。「あってはならない出来事だと思った。今後の人生に役立つことだと思う」と語った。今後チームは沖縄、鹿児島でキャンプをして、2月24日の開幕に備える。高木監督は「長崎はトライ、チャレンジするチーム。常にいろんな意味で攻めるチームにしていきたい」と意気込む。(堤之剛)