2010年広州アジア大会の男子スプリント・カヤックシングルに出場し銅メダルを獲得した鈴木康大選手
昨秋に開かれたカヌー・スプリントの国内最高峰の大会で、ライバルの飲み物に禁止薬物を故意に入れた前代未聞の事件。9日にその事実を認めた日本連盟の記者会見で、事件の背景が明らかになった。
「このままでは東京五輪は…」禁止薬物混ぜた選手に焦り
加害者の鈴木康大選手(32)=福島県協会=は2010年の広州アジア大会のころから、小松正治選手(25)=愛媛県協会=を含めた複数の日本代表選手のパドルを割ったり、隠したりするなどの妨害行為をひそかに働いていた。
被害に遭ったのは5~6人。いずれも鈴木選手と同じくらいか、実力が上のライバル選手だった。ドーピングでライバルをおとしめる行為にエスカレートした嫌がらせの兆候は、7年ほど前からあったが、連盟は「まさか内部によるものだとは思わなかった」。
鈴木選手はカヤックシングル(1人乗り)の1000メートルで日本選手権を制するなど、国内の有力者の一人だった。ただ、五輪出場の夢はスプリント男子の派遣が0人だった北京、3人だったロンドン、0人だったリオデジャネイロ大会でもかなわず一度は引退した。
地元開催の五輪を控え、五輪出場経験のある妻や、周囲の勧めで再度、現役復帰してからは「500メートルで争うフォア(4人乗り)で五輪を目指す」と方向転換。4人の候補争いで鈴木選手に立ちはだかった一人が、短い距離を得意とする小松選手だった。
連盟が問題を把握したのは、200メートルで小松選手が1位、鈴木選手が8位になったカヌー・スプリント日本選手権から2カ月後の昨年11月だ。ドーピング検査の結果、小松選手の尿から陽性反応が出た。17日に強化合宿中の沖縄県宜野座村で選手らが集められた。
個別に聞き取りをしていくと、…