自身の体験もまじえ、がんを通じていのちの大切さなどを子どもたちに教える三好綾さん(16年11月、本人提供)
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20代で乳がんになった経験をもとに、子どもたちに「いのちの大切さ」を教えている三好綾さん(42)。鹿児島を拠点に、小中学校をめぐっています。どんな思いで授業をしているのかを伺いました。
特集「がんとともに」
がんで教える
主に小中学生向けに8年前、「いのちの授業」を始めました。
がんの知識を教えるだけではなく、がんを通して命の大切さ、病気への向き合い方、病気以外の困難に直面した時にどう向き合っていくかを伝えてきたいという思いから「いのちの授業」と名付けました。「がんを教える」だけでなく、「がんで教える」ということです。困難にぶつかっても「それでも生きて」、「周りの信頼できる大人に助けを求めて」と子どもたちに語りかけます。
学校に出かけて話をする語り手は、NPO法人「がんサポートかごしま」のメンバー7人です。活動の場は5校から始まり、年々増えて今年度は61校になる見通しです。
きっかけはNHKのドキュメンタリーを見たことでした。大分県の養護教諭で乳がん経験などを語る「いのちの授業」に取り組んだ山田泉さん(2008年死去)を取り上げた番組に、心を動かされました。がんサポートかごしまの仲間たちと話すうちに、鹿児島の子どもたちにも伝えたい、と授業を始めました。
みよし・あや
1975年生まれ、鹿児島県薩摩川内市出身。長男出産の8カ月後、27歳の時に乳がんに。2007年に「がんサポートかごしま」を設立した。2010年にNPO法人化し、理事長に就任。同年から主に鹿児島県内でがん教育「いのちの授業」を実施。一般社団法人「全国がん患者団体連合会」の設立に関わり、事務局長も務める。
学校で自身の乳がん経験を語る三好綾さん=17年11月、本人提供
入念な準備、アンケートも
授業での出会いは一期一会。1カ月ほど前には必ず、担任の先生らと打ち合わせをしてしっかり準備をします。小児がんの子やがん闘病中の親がいる子、がんに限らず身近な人を亡くした子がいるかどうかなどを把握するためです。
子どもたちには事前にアンケートを書いてもらい、どんなことを聞きたいか質問を紙にまとめておきます。授業が始まると、子どもの名前を呼び、それぞれの質問に答えていきます。名前が呼ばれると子どもはうれしいし、より記憶に残ります。距離感も縮まります。授業前の休み時間に教室に入って、準備をしながら子どものニックネームなどをリサーチすることもあります。
「亡くなる」は「負け」ではない
授業では、メンバーそれぞれのがんになった経験、がんの予防法に加えて必ず、亡くなった患者さんの話もしています。がんは必ず治る病気ではないので、亡くなる人もいます。この事実も知ったうえで「亡くなるイコール負けではない」「しっかり向き合って生きた方」の話も伝える必要があります。
がんサポートかごしまのメンバーは、「かみづるさん」の話をします。「いのちの授業」を一緒にしてきた仲間で、12年に旅立った上水流(かみづる)政美さんのことです。上水流さんが、がんの再発後に富士山に登ったりクロアチアへの一人旅に挑戦したりしたことや、「未来に生きるあなたたちに、いのちをバトンタッチします」という言葉を残したことなどを伝えます。授業を受ける子どもたちも、身近に亡くした人がいれば、その人に重ねて考えてくれているようです。
がんを通じて命の大切さを教えている三好綾さん=東京都品川区
死を教えるのは難しいと言う声もありますが、「人はいずれ死ぬけれど今は生きている」「一生懸命生きるとはどういうことか」を教えるのが教育だと思っているので、絶対に外せない部分です。
授業の最後には「今日、聞いた…