佐藤天彦名人(右)と対局する藤井聡太四段=14日午後、名古屋市東区の東桜会館、戸村登撮影
中学生棋士、藤井聡太四段(15)が14日の朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)で、将棋界の頂点に立つ佐藤天彦名人(29)を初対戦で破った。現役のタイトル保持者との対戦も、勝利も初めて。昨年、公式戦29連勝の新記録を作った新人が、また一つ歴史に名を刻んだ。
【特集】名人への道 藤井聡太
藤井四段は1次予選で4連勝、2次予選で2連勝して本戦に進出。この日午前の1回戦で澤田真吾六段(26)を破った。本戦シードの佐藤名人は、1回戦で永瀬拓矢七段(25)に勝利。この結果、両者の初対戦が実現した。
名人を始めとするタイトル保持者は、各タイトル戦やトーナメントなどの予選を免除されることが多い。新人にとって、名人は対戦すること自体が難しい存在だ。
この日の対局は、名古屋市東区の東桜会館でファンに公開されて行われた。約40人の報道陣が見守る中、午後2時に対局が始まった。
佐藤名人の作戦は「横歩取り」。名人戦の大舞台でもタイトル獲得の原動力となった得意戦法だ。藤井四段は、これを真っ向から受けて立った。
その後、互いに戦機をうかがいながら駒組みが続いたが、リードを奪ったのは藤井四段。相手の攻めの主力である飛車の働きを封じて優位を拡大し、勝利した。控室で検討していた鈴木大介九段(43)は「手厚い、大人びた将棋だった。中学生が名人に勝つことは信じられないことだが、藤井さんだと普通に思えてしまう」と話した。
藤井四段は2016年12月のプロ初戦から29連勝。その後は先輩棋士たちに敗れ、トーナメントの上位進出を相次いで阻まれたが、この朝日杯では快進撃を続けている。2月17日にある準決勝では、羽生善治竜王(47)と対戦する。(村瀬信也)